日本動物行動学会賞の性格と特徴
日本動物行動学会賞(以下、動物行動学会賞)は、2つの特徴を持っています。
1つは、よくまとまった1つの研究に与える賞であるという点です。ご存知のように,日本の学会賞の多くは、それまでの個人の研究業績全体を評価するものです。一方、動物行動学会賞はある一人の研究者の全業績を評価する賞ではありません。研究経験の長い研究者は、多数の異なるテーマについて業績をあげていることも多いでしょう。しかし、動物行動学会賞は、その中の1つのよくまったテーマに関するものだけを選考の対象とします。大胆不適な比較かもしれませんが、ノーベル賞と『同じような性格』と言えるかも知れません。
もう1つの特徴は、受賞対象となる研究をした会員の経験年数や年齢を限った賞ではないことです。最初に述べた特徴と過去5年以内の発表という制限から、若手の研究者でも、多くの論文を既に発表しているシニアの研究者と対等に競い合えるものになっています。この点を上田前会長(動物行動学会賞創設時の学会長)は、『若手とシニアが同じ土俵で競う』と表現しています。実際に若手の研究者の研究に与えられたこともあり、より経験を積んだ研究者の研究が受賞したこともあります。
2013年12月10日 日本動物行動学会会長
日本動物行動学会賞 受賞者(敬称略)
2022年度
- (1)動物の行動に関する新たな現象の発見 松村 健太郎
コクヌストモドキの移動活性に対する人為選抜が繁殖形質に及ぼす影響を調べた研究
2021年度
- (1)動物の行動に関する新たな現象の発見 西海 望
シマヘビに対するトノサマガエルの防衛戦術:逃避開始の意思決定における合理性の研究
- (1)動物の行動に関する新たな現象の発見 竹下 文雄
ハクセンシオマネキのメスによる配偶者選択と関連する社会性の研究
- (3)動物の行動を研究する新たな方法の開発あるいは既存の方法の改良 鈴木 俊貴
音声信号の「意味」を検証する新規実験パラダイム
2020年度
- (1)動物の行動に関する新たな現象の発見 高田 守
昆虫の家族を用いた給餌を告げる親由来シグナルの実証
- (2)動物の行動に関する新たな理論の構築あるいは既存の理論の発展 竹内 剛
チョウの配偶競争に関する理論的研究
- (2)動物の行動に関する新たな理論の構築あるいは既存の理論の発展 水元 惟暁
配偶者探索における雌雄の動きのパターンと遭遇率の研究
2019年度
- (1)動物の行動に関する新たな現象の発見 髙須賀 圭三
行動から見るクモ寄生バチによる造網行動操作の究極要因と至近要因
2018年度
- (1)動物の行動に関する新たな現象の発見 堀田 崇
タンガニイカ湖産カワスズメ科魚類における社会的認知能力の検証
- (2)動物の行動に関する新たな理論の構築あるいは既存の理論の発展 安井 行雄
雌の多回交尾の進化に関するbet-hedging理論の死と復活
2017年度
- (1)動物の行動に関する新たな現象の発見 佐藤 成祥
ヒメイカの交尾後精子排除によるCryptic Female Choice
- (3)動物の行動に関する新たな理論の構築あるいは既存の理論の発展 山口 幸
海洋生物の性表現に関する理論的研究
2016年度
- (1)動物の行動に関する新たな現象の発見 松本 有記雄
小型魚類ロウソクギンポにおける雄の強制配偶と雌の対抗戦術
2015年度
- (1)動物の行動に関する新たな現象の発見 植松 圭吾
昆虫社会における「おばあさん効果」の実証
2014年度
- (1)動物の行動に関する新たな現象の発見 土畑 重人
社会性昆虫を用いた「公共財ジレンマ」現象の総合的実証
- (1)動物の行動に関する新たな現象の発見 関澤 彩眞
チリメンウミウシにおける使い捨てペニスの機能とその補充
- (3)動物の行動を研究する新たな方法の開発あるいは既存の方法の改良 沓掛 展之
適応進化の検出を可能にする新しい系統種間比較
2013年度
- (1)動物の行動に関する新たな現象の発見 鈴木 俊貴
- (2)動物の行動に関する新たな理論の構築あるいは既存の理論の発展 高橋 佑磨
2012年度
- (1)動物の行動に関する新たな現象の発見 細川 貴弘
2011年度
- (1)動物の行動に関する新たな現象の発見 松浦 健二
2010年度
- (1)動物の行動に関する新たな現象の発見 田中 啓太
- (2)動物の行動に関する新たな理論の構築あるいは既存の理論の発展 辻 和希
日本動物行動学会日高賞 受賞者(敬称略)
2022年度
2021年度
2020年度
2019年度
2018年度
2017年度
2016年度
2015年度
2014年度
2013年度
2012年度
2011年度
2010年度