行動学会 MailNews (120) 05 Oct 2012 行動学会 MailNews は日本動物行動学会の会員向けに不定期に発行されるメールマガ ジンです。 *************************************************************           CONTENTS ・ISBE印象記 ************************************************************* ・ISBE印象記 8月にスウェーデンルンド市で開催されたISBEに参加された入江さん、相馬さん、本間さ んから大会の印象記を寄稿していただきました。 -- ISBE2012ルンド印象記 入江尚子(総研大) 今回のISBEは北欧開催!ということで、何を発表するか決める前から registrationを済 ませていました。参加者は開催地の研究者の割合が増える ので、その国周辺での研究の 流行が見えたりして、おもしろいものです。基 本的にISBEは哺乳類の研究がいつもとて も少ないのですが、今回はいつにも 増して哺乳類の発表が少なかったように思います。 今回は別の哺乳類系の学 会と開催期間がかぶっていたのも影響したのでしょうか? さて、哺乳類(アジアゾウ)の数覚を研究している自分と分野がかぶる研究 者に会える 確率はほとんどないのですが、めげずに口頭発表で行きました。 ポスターにすると、興 味を持ってくれる人が少ないだろうからあまり発表を 聞きにきてもらえないかもと思っ たからです。 口頭発表の会場は全部で6つありました。会場はヨーロッパならではの古くて 重厚な趣の ある素敵な造りになっていてわくわくしていたのですが、私の会 場は広いけど現代的で ステンドグラスもシャンデリアもない普通の部屋で少 しがっかり。気を取り直して「1ト ーク3笑い」を実践しました。私は発表の 中にちょっとした笑いポイントをちりばめるよ うにしています。つかみで1笑 い、真ん中あたりで1笑い、締めに1笑い。すばらしい研究 発表がたくさんあ る中で、私のような無名の者にとって、ちょっと印象付けて自分の研 究を覚 えてもらう上で有効だと思うのです。発表前は日本の知り合い以外にはだれ にも 話しかけられなかったのですが、発表後はちらほら話しかけてもらえる ようになりまし た。今回は分野も研究対象も同じ研究者が全くいなかったの で共同研究にこぎつけるよ うな話はなかったのですが、過去のISBEでは同じ 手口で、今でもメールで意見交換など を続けている研究者と出逢うこともで きました。 今大会で一番印象に残ったのが、大阪市立大のKohdaさんたちによる、魚類の 鏡像自己認 知の研究発表です。鏡像自己認知というと、一部の‘高等な’種 にのみ確認されていた 能力でした。それが魚類でも確認されたのですから、 「自己認知」についてもう一度考 え直すきっかけとするべきなのかもしれま せん。 二番目に印象に残ったのは、オオハナインコの母親による息子殺しの研究で す。母親が 自分の子供、しかも息子を選択的に殺すという行動が報告されて いました。私は自宅で インコを飼っていて、うちのインコは雄なので、「君 はオオハナインコじゃなくてよか ったねぇ」と思ったものです。 さて、国際学会で楽しみなのが食事です。ランチビュッフェやコーヒーブレ ーク時の甘 ったるいマフィンやクッキーを私はとても楽しみにしています。 でも今回はちょっと文 句があります!ISBE側からの「会場周辺にレストラン はほとんどありませんよ」という 脅しもあって今回も迷わず学会ランチに申 し込みました。これがあまりおいしくありま せんでした。量もとっても控え めで、国際学会に参加するたびに少し体重が増える私と してはありがたくも あったのですが、足りなくてバーガーキングにハンバーガーを買い に行って いる人もいました(私は我慢しました!)。バーガーキング?そう、普通に フ ァストフード店もカフェもたくさんありました。ISBEにしてやられまし た。用意されて いたミネラルウォーターは全部炭酸入りだったのでそれでお 腹は膨らみましたが。学会 の外で食べたものはとってもおいしかったです。 北欧料理は日本人の口に合うようでし た。 スウェーデンは人がとっても親切だと感じました。電車の出発ホームがわか らなくてぽ けーっとしていたら、向かいのホームにいたお兄さんが「どこ行 きたいの!?」と叫ん できてくれたので、「マルメ!」と応えると「○番線 だよ!!」と教えてくれました。 どのカフェの店員さんもゆっくりとしたき れいな英語でフレンドリーに話しかけてくれ ました。社会保障がしっかりし ているから、国民の皆さんの心にゆとりがあるからでし ょうか。安全だし、 これまで行ったヨーロッパの国の中でのお気に入りにランクインし ました。 -- 相馬雅代(北大・理・生物)  今夏8月にスエーデン・ルンドで開催されたISBEに参加してきました.  私にとっては,NY・コーネル大,オーストラリア・パースに続いて3回目のISBEでした .大学院進学以降のここ8年ほどの間,できるだけ毎夏,国際学会に出るよう努め,また 幸いにも発表する機会にめぐまれてきました.主にIECとISBEに隔年交互で出ていた他は, IOC(国際鳥類学会議),IBAC(国際生物音響学会)など,知的な刺激をもとめて学会を 行脚するのは,研究上の糧ともなり,共同研究にもつながるよい経験でした.ところが, さすがに北大に職を得てからは,時間の融通も利きにくくなり,「まわりの空気を読む」 ということもやっと覚え始めて,2011年は国際学会参加を見送った経緯があります.です が,やはり生で最近の動向にふれたいという欲求は抑えがたく,また多少の「空気を読ま ないふり」も醸せるようになり,今年はいそいそとルンドに向かった次第でした.  ただ,今年のISBEは,私個人としては期待も大きかった分,肩すかしをくった部分も多 かった,というのが本音です.私の研究の中で大きな部分を占めている鳥の歌という題材 は,行動生態学の中でも主要なテーマのひとつだと思いますが,残念ながら近年稀に見る ほど発表数も研究者数も少ない,という印象を受けました.特に,いわゆる大御所の姿は 本当に稀でした.理由はわかりませんが,今回のISBEの参加登録費用が,特に早期割引で ない場合には大変高額だったことも一因かもしれません.また鳥の歌という領域が,内分 泌や神経科学,認知科学など,広く他の分野と交差する度合いは年ごとに増しており,究 極要因へのアプローチのみだけでは済まされなくなっていることの現れともとれます.た だ,鳥の歌をはじめとして,認知機能や性淘汰形質への発達の影響,特に発達ストレス仮 説の検証に関しては,いまだ衰えることのない勢いを感じました.その他,全体を通して 印象に残ったのは,鳥では托卵研究,分類群ではクモ研究の熱さでした.また,パーソナ リティーやソーシャルネットワークをキーワードとした研究も,相変わらず盛り上がって いるのを肌身に感じました.  北欧を訪れたのは,公私を通じて初めてでしたが,フランスやドイツ,イギリスなどと 違って,人の温かさや笑顔の優しさが心地よく,滞在を楽しむことができました.福祉の 充実した国では人にゆとりがあるのだろうか,と思う反面,喫煙率はずいぶん高いように 見受けられ,本当に幸せな国なのだろうか,とも考えさせられました.  電車の行き先表示で迷ったり,美味しい食べ物を探してお店の人と会話したり,国際学 会ならではの経験を楽しみつつ,頭の片隅にはきたる2014年のことがよぎりました. 2014年は,国際鳥類学会議が東京で,国際神経行動学会が札幌で開催予定です.旧知の研 究者の中には,2014年は日本に行くことになりそうだね,と声をかけてくれる人もいまし た.彼らが今度日本に来るとき,楽しかったと心から思ってもらえるように,私も働かな ければならないなと思いを新たにしています. -- ISBE 2012 参加報告 本間 淳(Department of Biological and Environmental Science, University of Jyvakyla) 2012年8月12日から18日にかけてスウェーデンのルンド大学(Lund University)で行われ た、第14回国際行動生態学会(ISBE)に参加しました。私にとっては、4回目の参加です。 現在私は、学術振興会の海外特別研究員制度でフィンランドのユヴァスキュラ大学( University of Jyvakyla)に滞在し、警告色や擬態、分断色(隠蔽色の一種)など、動物 の体色やシグナルの進化に関する研究を行っています。学会の開催地であるルンドはフィ ンランドとはお隣のスウェーデンにあるのですが、ほぼ南端に位置するため、デンマーク の首都コペンハーゲンから入る方が便利です。行きはコペンハーゲンまでの直行便。1時 間半ほどで到着しました。コペンハーゲン空港駅からルンドまでは直通電車でした。途中 、海上を渡る長い橋があったのですが、海上に設置された多数の風力発電装置をみて「さ すがに北欧だ」と感じたり、橋の近くで明らかに座礁しているのに(しかも座礁してから それほど時間が経っていないような感じ)完全にスルーされている船があるのをみて「や っぱり北欧だ」などと思ったりしているうちに、30分ほどで到着しました。ルンドは古い 大学町ということで、大学周りは歴史を感じさせつつもどことなくかわいらしい建物が石 畳の道沿いに続いています。近代的なビルと豪奢な歴史的建造物が混在する首都のストッ クホルムとはだいぶ趣が違いました。 ISBEは1986年に始まった比較的新しい国際学会で、2年に1回開催されます。今大会の参加 人数は要旨集からざっと数えるだけでも900人に上ります。各日の大まかなスケジュール は、午前9時から45分ずつのplenary talkが2題、コーヒーブレイクのあと口頭発表のセ ッションとなっています。セッションにはそれぞれテーマがあり、その分野のシニア研究 者を座長にして、5題ずつの発表があります。長めの昼食時間の後、午後はセッションが 2回あり、夕方からポスター発表のコアタイムになります。基本的にこの構成で5日間行 われますが、中日である3日目と最終日の5日目は、午前中にプレナリーなしでセッション が2回あります。3日目の午後はエクスカーションかフリータイムとなります。また、5日 目は午後にセッションが1回あった後、行動生態学の誕生と発展に偉大な貢献をした故 William Hamiltonの名を冠した、Hamilton Lectureというビックネームによる講演があり ます。今回の演者はJohn Krebsでした。行動生態学の学会なので、合計84のセッションの テーマは、ほとんどが、意志決定、性選択、シグナル等に関わる、この分野におけるオー ソドックスなものでした(「Carotenoid and stress」などの毛色の違うセッションも多 少ありましたが)。ただ、実際の発表内容はセッションのテーマにある程度沿っていると いう程度で、研究自体の本来のテーマや方法などは、かなり多様です。その意味で、いわ ゆる行動生態学に特化した研究だけでなく、遺伝学、認知科学、生理学等の隣接分野を取 り込んだ研究が目立ちました。逆に、行動生態学自体にとってのブレイクスルーとなりそ うな発表には、残念ながら出会えませんでした。11月の日本動物行動学会大会におけるラ ウンドテーブルでも取り上げられていますが、行動生態学がこれからどこに向かっていく のかは「本家」の学会においても明確ではありません。発表における研究対象やテーマの 比率は、日本の学会とはだいぶ異なりました。最も多い研究材料は鳥類、テーマは性選択 がらみでした。逆に、日本では熱いテーマである社会性、主要なアプローチである数理モ デルなどは、日本で見られるほどには人気がないようです。この違いは、各テーマの「適 応度」に地理的な変異があるためというよりは(多少はあると思いますが)、日本への行 動生態学導入初期にこの分野を牽引した研究者集団による要因(創始者効果)の方が大き いように感じます。口頭発表の可否は、提出された講演要旨をもとに大会委員会が審査・ 決定します。それでも、発表者は誰でも知るような大物から、大学院生まで幅広く見られ ました。全体として若い人が活発に参加しているのは、日本動物行動学会と共通している ところだと思います。 学会のメイン会場はルンド大学内にある赤煉瓦造りのまるでお城のような建物でした。古 い建物の外観、内装をなるべく保ちつつ、現代の使用に耐えうるような改装が加えられて いました。そのため、男子トイレはドアを開けるといきなり階段で、まるまる1階分上ら ないと肝心の場所にたどり着けない等、構造が多少複雑になっていましたが、非常に趣が ありました。ただ、参加人数に対して収容力がちょっと足りない気がしました。最大の会 場もプレナリーの際には、みっちり隙間なく人が座っても、あぶれる人がいましたし、口 頭発表でも立ち見あるいは床に直座りして発表を聴かなければならないことも結構ありま した。ポスター会場は2つの広間+廊下1カ所+1部屋と分散させてあったため目当てのポ スターを発見するのが難しくなっていました。特に、「ポスター部屋」は奥まったところ にあったので、そもそも存在に気づいていない人もいた上、部屋内の配置もきつく、一番 端の人は、壁との間が80cmぐらいしかありませんでした。やはり、これだけ大きい学会の 開催に当たっては十分な広さの会場を確保することがネックになるようです。学会会場の 前は芝生の広場になっていて、多くの参加者が昼食時にそこにすわって弁当的なもの(参 加申し込み時に頼む・有料)を食べていました。また、日が経つにつれて、セッション中 でも芝生で寝転がってくつろぐ参加者が増えていきました。天気に恵まれたこともあって 、相当気持ちよさそうでした。 ISBEの時間進行は中央管理システムを採用しているため、会場間のズレが生じることがあ りません。聴きたい発表があったのに行ってみたら終わっていた、あるいは大きく遅れた ために別会場で聴けるはずだった発表を逃してしまった等のことは、学会に参加すれば必 ずといっていいほど経験することだと思います。ISBEのシステムでは、このようなことは 起こりません。以前の参加報告でも触れられているようですが、個人的に非常に良いシス テムだと考えているので紹介したいと思います(動物行動学会の大会ではあまり役に立た ないかもしれませんが・・・)。通常の学会のように各会場にタイムキーパーがいるので はなく、全発表会場で同時に音が鳴るように自動制御されています。今回は、発表12分、 質疑応答3分となっていました。鈴の代わりに動物の鳴き声が11分(golden oriole、ニシ コウライウグイス)、12分(Europian tree frog、アマガエルヨーロッパ亜種)、15分( great reed warbler、オオヨシキリ)の各時間に鳴らされます。15分の鳴き声は非常にや かましい上に長いので、しゃべり続けることができなくなります(強制終了)。この強制 終了システムが非常によいのは、すべてを機械のせいにして冷徹に進行を行うことができ る点です。時間が過ぎても質疑応答を続けようとする人がいる場合、座長がそれを遮るの は実際問題としてなかなか難しいですが(とくに、前の発表者が座長をするようなシステ ムの場合)、このシステムなら「あとは個人的におねがいします」と簡単に言うことがで きます。「15分の鳴き声」の後、音楽が鳴り出し5分間の移動時間となります。音楽は移 動時間中鳴り続け、音楽の終わりが次の発表開始の合図となります。移動時間が5分とい うのは、会場の配置によってはちょっと長すぎますし、日本の学会の場合には発表者数も 多いので、もっと短くできるかもしれません。 今回、私は運良く口頭発表にまわされたのですが、ざっくりプレゼンスライドを作ったと ころでリハーサルしてみたところ、20分もかかってしまいました。ちょっと長いのは分か っていたのですが、目安の発表時間は12分なので話になりません。私の発表は、分断色と いう隠蔽色の一種の機能を実際のガの翅の斑紋パターンを紙に印刷した人口餌を作って、 鳥(シジュウカラ)に提示する実験で検証するというものでした。翅の斑紋パターンの操 作等、方法の部分にかなりこだわりがあったことと、聴衆にもその点に強く関心を持つ人 が多いと予想されたことから、かなり複雑な実験方法をある程度きっちり説明しないと、 発表の意義付けも大きく減損してしまいます。そこで、補足的な実験データに関する部分 をばっさり削り、スライドの内容もできるだけ削り、シンプルな説明になるように心がけ ました。後は、ひたすら練習です。はじめはどうなることかと思いましたが、何とか時間 内に収まりました。発表後は、その筋の大物に声をかけられアドバイスをもらったり、研 究内容について突っ込んだやりとりをおこなったりすることができました。また、今回は 、自分の発表をして終わりにするだけでなく、他の人の発表を聴いていて「こうやったら もっと面白くなるんじゃないか」ということがあった場合、発表の後会場で見つけて個人 的に話しかけるようにしました(質疑応答の時に割り込むほどの度胸はないので・・・) 。話しかけた人たちが自分と近いテーマを研究していたこともありますが、皆私の発表を 聴いてくれていて、話をスムーズに進めることができました。口頭発表は、精神的・技術 的(英語)な面でハードルが高いですが、やはり自分の研究を認知してもらうという点で は効果が大きいので、トライする価値があると思います。ものすごい早口でまくし立てる ネイティブ(そうじゃない人もいますが)スピーカーに混じっての口頭発表はハードルが 高いですが、棒読みでなければ原稿を持ち込んでもかまわないと思います。あのMalte Anderssonも印刷した原稿を持ち込んでました!私の場合は、事前に会場係に頼んで発表 者用モニターに写ったパワポ画面を発表者モードに切り替えてもらいました。 2日目に発表を終えてしまったので、その後は完全にリラックスモードです。ISBE恒例の サッカー大会にも参加しました(実はもう3度目の参加ですが)。最近は、中日にあるエ クスカーションの時間の裏イベントとしてサッカー大会を持ってくることが多かったので すが、今回は日の長い(日没は9時半ぐらいでした)北欧での開催ということも手伝って、 ポスター発表終了後の午後7時スタートというやや強引なスケジュール。さらに、予選リ ーグと決勝トーナメントを別日に行うというかなり気合いの入ったものでした。ISBEでは 参加者の募集は、会場に張り出されている紙に参加希望者が名前を記入するだけというか なり適当な方式。同じ国の参加者同士でチームを編成することが多いですが、そのような 相手がいない人は適当にどこかのチームに名前を書き入れています。我々は、長野大学の 高橋大輔さんを中心として日本チームを作っていますが、今回も他の国からの参加者が加 わり、結局延べ人数では半分以上が日本人以外でしめられました。大会は、基本的に天然 芝のグラウンドを借りて行われ、飲み物や軽食も支給されます。気合いを入れて準備して 来ている参加者がいる一方で、学会が始まってから知り合いに(強引に?)誘われて参加 する人も多いため、ゲームを楽しむというスタンスが基本になっています。参加チームの レベルも、日本生態学会のエコカップでいえば「エンジョイクラス」ぐらいです。「日本 チーム」は、前回のオーストラリア・パースでの大会では3位、今回は4位の成績でした。 次回も「日本チーム」は結成されると思われますので、次回大会に参加される方は運動の できる装備の準備をお願いします。サッカー経験の有無は問いません。 日本の学会とは異なり、国際学会ではすでに論文化された研究の発表が目立ちます。 ISBEも同様です。したがって、自分がフォローしている分野における最新情報を仕入れに 行くというのは、学会参加の目的としては適切ではないかもしれません。一方で、世界中 から集まってくる人達に自分の研究を知らせ(ちゃんと論文を書けば必ず認知されるとい うわけではありませんし)、興味を共有する研究者と議論することで、自分の研究テーマ を深めることができると思います。共同研究のきっかけづくりにも、「直あたり」は重要 です。 私にとっての初めての国際学会参加は、2004年にユヴァスキュラで開かれたISBEでした。 京大理学部の動物行動学研究室でセミナー発表させてもらった際に、当時同研究室に在籍 されていたYさんから「こんど行動生態学国際学会があるから、行ってみない?僕も参加 するし」、と誘われたのがきっかけです。それまで、国際学会に参加することなど考えた こともなく、海外旅行経験がほぼゼロだったので迷ったのですが、せっかくの機会だから と申し込みました。後日、参加申し込みをしたことをYさんに伝えると「あー、僕、今回 はパスすることにしました」とまさかの返信・・・。当時の私の近辺には他に参加すると いう人が全くいませんでした。システムを理解せず、あまりよく考えずに申し込んでいた ため、初めての学会でいきなり口頭発表になってしまったのですが、何とか無事に終える ことができました。学会会場に行ってみれば日本人研究者もけっこう参加されていて、と はいえ、このような「アクシデント」でもない限り、国際学会に単身で乗り込むというの はやはりハードルが高いと思います。はじめて参加する人は、指導教官か先輩など、同じ 学会に参加する人が周囲にいる場合がほとんどです。そこで、ISBEに限らず、国際学会に 参加してみたいが周りにそのような人がおらす不安があるという方は、(過去のものも含 めて)日本動物行動学会のNews Letterの学会参加報告を参考にしたり、その執筆者に直 に相談したりしてみてはいかがでしょうか。 2004年当時は、ユヴァスキュラ大学のグループで盛んに研究されている警告色や擬態の進 化については、教科書的な知識があるのみで特に興味を持っていませんでした。その後、 ひょんなきっかけから擬態や警告色に手を付けることになり、ふたたびユヴァスキュラの 地を訪れることになりました。ISBE 自体に参加したことは、このこととは直接の関係は ないのですが、何か縁のようなものがあったのかもしれません。 ****** end of Japan Ethological Society MailNews (120) **********